2019年 年間ベストアルバム

2019年版の年間ベストです。

 

選定基準は昨年と同じです。

 

本文には『『なぜ好きなのか』』という理由とか自分の気持ちを添えています。

 

また、昨年同様アルバム内で個人的にいちばん好きな曲も合わせて添えております。

 

わたしの2019年はこのような音楽と共にありました。以下がそのリストです。

 

 

 

 

50.  Hama - Houmeissa

 

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繰り返す単純なリズムと天然アシッドなシンセ音が部屋中にビリビリ響きます。パワーニューエイジかはたまたパワフルアンビエントか、面白い音楽が星の数ほどある現在の音楽世界でも飛び抜けてユニークなプリミティブエレクトリックダンスミュージックはサハラ砂漠から突然変異のように出現しました。このミニマルな音楽は必要最低限のものだけで構成されていますが、逆にその情報量の少なさとやけっぱちな勢いが不思議な相互作用となり結果トランス感をマックスまで高めることになります。中学生がパソコンの授業中片手間に5分くらいで作ったかのようなジャケも雄弁に内容を物語っていて、何から何までパーフェクトに異端児な奇跡の逸材です。

 

https://open.spotify.com/track/5E9mFlvnXCcTRAo3CRq4ed?si=FyWzVoKcQ-mIV_taHOmljg

 

 

49.  Xin Seha - 1000

 

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夢の世界で鳴るエレクトロミュージックは甘い調べ。シン・セハというフィルターを通せば往年のハウスだって新世代のポップアンセムへと生まれ変わります。音楽的流行の最先端なサウンドデザインにアジア人である誇りを大匙一杯程度混ぜたら世界規格の個性が出来あがりました。我らのお隣さん韓国はどのジャンルに関しても敵なしといった充実ぶりでポップミュージックの最前線をひた走ります。

 

https://open.spotify.com/track/3ncjTRjO6107qWWeeI8Hmk?si=V0H1TBXqQwCEZu8azjdHEA

 

 

48.  Babe Rainbow - Today

 

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サーフィンUSAのエンドレスサマーは39度のとろけそうな日ばかりでカラダが夏になるあー夏休みなへっぽこアルバムジャケットだけを見て判断しないでください。現在感染者を拡大し続ける新世代サマーオブラブ代表格の新作は熱射で脳がトロけたトロピカリズモ的ソフトロックで、自宅でダラダラしたい派の民にとっては良き伴侶となること請け合いです。暑い夏は海に山に花火大会に!も良いかもしれませんが、チルいソフトサイケでも聴きながらアイス食べたりネットしたりマンガ読んだりゲームしたりするのも立派に夏をエンジョイしてると思うんですよね。

 

https://open.spotify.com/track/22rtRZfyyXfOwEWdsRIaj0?si=CjVs7ot7R4Ch68uHc2kMCg

 

 

47.  Durand Jones & The Indications - American Love Call

 

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気持ちがとろける甘い歌声は耳の奥に響き、天上のハーモニーが作るムードは甘い蜜の味、センチメンタルな懐かしいメロディは老若男女音楽を愛する者の心を鷲掴みます。オールドスクールスタイルのソウルでは今年リー・フィールズが『It Rains Love』という素晴らしき作品をリリースしておりそちらも愛聴したのですが、愛を語り合う恋人同士のように甘々メロウなサウンドが聴く物全てを骨抜きにするドラン・ジョーンズに軍配が上がりました。

 

https://open.spotify.com/track/4B8edpeAcQf1pQgXA0jdh9?si=mw9QMt9gTGKuT6bv4XCr8A

 

 

46.  YUNA - Rouge

 

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マレーシアの美しき蝶は上品なディスコチューンに絹の歌声を乗せて神秘の森をひらひらと舞いました。豪華なゲスト陣は彼女の透き通った世界観にさり気なく華を添えました。チルでハイセンスな楽曲群は普段R&Bをメインに聴かない人々をも虜にしました。一日遊び疲れた夏の夜、マンションに帰ってベランダで夜景を眺めつつ缶チューハイを飲みながらYUNAの素敵な音楽を聴く……わたしにとってそれは夢のように至福な時間だったのです。

 

https://open.spotify.com/track/19zPT36WogsfBd8HIaUnt4?si=mX0jCl7vQaqfoweuI8KFUw

 

 

45.  ねじれたスーパーグラフィックス - Daimakaimura

 

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わたしが子供の頃、部屋のテレビはブラウン管でしたし、もちろん自宅の屋根には剥き出しのアンテナが設置されておりました。ある冬の晩、降り続いた大雪で屋根のアンテナが埋もれ受信が悪くなり、テレビから流れる映像音声全てにザラザラした強烈なハーシュノイズがかかった事があります。テレビから流れる"ノイズで凶悪に歪んだ音声/効果音/曲"たちを強制的に鼓膜に押し込まれたその時のわたしは(早くテレビよ直ってくれという切実な思いも込みで)恐怖と不安に震えるのと同時に後ろめたく仄暗い興奮を子供ながらに感じたのです。そして2019年、壊れ歪んだテレビでプレイする『大魔界村』はただひたすらに闇のドローンノイズをデジタル画面に映し出し、大人になったわたしの心を薄暗い安心感で包むのです。

 

http://vacuumnoiserecords.bandcamp.com/track/--88

 

 

44.  3776 - 歳時記

 

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音楽は曲単位で聴かれる事が当たり前となった現在に中指を突き立てる存在、ロックやポップスの範疇では特に死滅しかかっていた"トータルアルバム"という概念は井出ちよのを依代として不死鳥のように蘇ります。前作ではさりげない実験程度に留まっていたものを大幅に増量した結果、もはや何が起こっているのか判別不能なほどのエクスペリメンタルポップへレベルアップしました。個人的にはバランス的にも前作の方が好き(CDとアナログ両方所有してるくらいです)なのですが、それはもしかしたらただ単に今作の超世界が圧倒的すぎてわたしの中でまだ未消化なだけなのかもしれません。

 

 

43.  wai wai music resort - WWMR 1

 

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今年はうんざりする程夏が長い一年で、9月を終えても日中は真夏の気温を維持し続けていました。一向に秋が始まらない10月5日上野恩賜公園野外ステージ、tiny pop fesのステージ上に簡素な機材と最小の編成で登場した兄と妹は長引く残暑の気温/天候/時間帯全てを味方につけながら淡々と気怠げに"夏の終わりの始まり"を連想させるリゾートミュージックを奏でていて、「夏が居残りした理由はこのライブの為だったのではないか?」そんな風に思えるほど完璧に雰囲気を支配していました(事実その日以降急速に秋めく気候になります)。昨年のTSUDIO STUDIOさんに続いてWWMRのカセットも無事ゲット出来てホッと一安心といったところですが、インターネットにぷかりと浮かぶ避暑地Local Visionsさんからリリースされる作品は今年も軒並みクオリティが高く、聴けば気分が高揚したりリラックスしたりジーンとしたりとバラエティ豊かで『年間ベストのLocal Visions枠』は来年以降も継続しそうな気配です。

 

https://open.spotify.com/track/4fT52nZ1w48XviGht24OSn?si=mZKCuwHOQtStYXLyg_L9Lg

 

 

42.  Josienne Clark - In All Weather

 

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新しい街で過ごす初めての秋はジョシエンヌ・クラークの音楽を聴いて聴いて過ごしました。秋の曇り空のように物悲しげで、雲間からもれる一筋の光のように温かく美しいフォークソング集、それはブリティッシュ・フォークの偉大な先人たちが作った音楽同様静かに始まり静かに終わります。近頃やっとこの街に来て初めての友達が出来ました。来年の秋には新しく出来た音楽好きの友達にこのCDを貸してあげようと思います。

 

https://open.spotify.com/track/7rTkhQk89vyPOEQOOH9k5j?si=s8-pNmC0SbyOF2rxGurOTA

 

 

41.  Child Abuse - Imaginary Enemy

 

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ブルータルアートロックまたはポストグラインドコアもしくはプログレッシブノイズロックとでも表現するべきでしょうか、狂騒的騒音の乱打乱打で幕ノ内一歩のデンプシーロールみたくがむしゃらに迫ってきます。ハードなイカれポンチ音楽集団は遥か昔からカルト的人気と共に数多く存在しますが、先駆者であるレジェンド達に負けず劣らずハイボルテージのキレっぷりで熱くなります。「大人になったら今よりもう少しだけまともな人間になって、きっとこういうバカみたいな音楽(褒めてる)は聴かなくなるんだろうな…」と思春期のわたしは漠然と考えておりましたが、残念ながらそんな事は全然ありませんでしたしこういう魅力的なバンドのせいで更に拗らせてる次第です。

 

https://open.spotify.com/track/3QPLzjrz6mLwKF4tT5uVA1?si=AGuHQA-VQNKjJ_tUb5zLKg

 

 

40.  Men I Trust - Oncle Jazz

 

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ふわふわのクッションみたいに抱きしめて離せない触感とか、丁度良い甘さで飽きがこない淡い色味の砂糖菓子とか、そんなロマンチックな物についつい例えてしまいたくなる軽めのダンスチューン。ただ単にドリーミーなだけではない、人間誰しも持っている陰の部分というか"青春の葛藤"みたいなもどかしさもチラチラ見え隠れしていて、中々味わい深く彼ら彼女らが現行ドリームポップの頂点と認識される程人気が出るのも頷けます。71分という収録時間はさすがに長尺すぎて途中ダレるという欠点もありますが、若い彼らが今出来る全てを袋一杯詰め込んだ贅沢な一品である事は疑いようのない事実です。

 

https://open.spotify.com/track/0DltZY7z8YvuDBSAbsIgPc?si=ZbfChiZXQuOVnpy7zJSIFQ

 

 

39.  Shinichiro Yokota - I Know You Like It

 

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家でのリスニングは別として、現場で欲しいのは結局心地よさと安定なのです。夜中の2時3時に野外フェスで踊れないエクスペリメンタルテクノとか聴いても(カッコいいとは思いますし瞬間的に興奮もしますが)徐々に五感が醒めていってしまうのです。日本のレジェンドが紡ぐ一晩の夢、進歩ではないかもしれませんがこれが理想のハウスミュージックです。

 

https://open.spotify.com/track/5tOqzb9byk1bvkqNnWcsW0?si=r_yj1_f2SHOzgdu67PWGIQ

 

 

38.  COMEBACK MY DAUGHTERS - WORN PATH

 

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世の中には『洋楽ロックと邦楽ロック』とか『USインディとUKインディ』などという棲み分けが一定数存在しますが、そのどちらからも信頼され愛されるバンドも確実に存在します。生粋のエモを出発点としギターポップファンやパワーポップファンをも巻き込み、ついには普遍的なインディーロックに辿り着いた奇跡のようなバンドCBMDもそのうちのひとつです。ギターロックを愛する者たちが作るギターロックを愛する者たちのための音楽、待望の音源リリースカムバック作をまずは心から祝って味わって遠くない未来に産まれるであろうフル音源を期待して。

 

https://open.spotify.com/track/30jrTcvJdA9qBw5Sa3Ef8U?si=SUg7QYIhTnSgKezC7PaYPg

 

 

37.  Bartosz Kruczyński - Baltic Beat Ⅱ

 

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『KANKYO ONGAKU』のグラミーノミネートが示すとおり、もはや飛ぶ鳥落とす勢いで世界的大流行中のニューエイジ。大量の作品が日々バンドキャンプなどに投下されております。その中でも一際七色の光を放っていたのがこのアルバムで、それは再生したが最後涅槃の世界へと強制連行され現実へ戻れなくなる危険を伴った強烈なものでした。繰り返すマリンバの跳ねる音色が聴こえ始める頃徐々に開いていく桃源郷への扉…そこは苦しみのない快楽だけの世界です。

 

http://bartoszkruczynski.bandcamp.com/track/in-the-garden

 

 

36.  Jo Schornikow - Secret Weapon

 

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寝る前に布団の中でこの音楽を聴きます。オーストラリア出身のSSWデビュー作を聴くとちょうど5曲目・6曲目あたりで自然とまぶたが降りてきていつの間にか心地よい眠りの世界にいます。このアルバムがリリースされた頃はちょうど4月も間近の頃で、オルガンの柔らかい音色が春の陽気のように暖かに感じられてわたしは春眠へと堕ちていきました。たまに初聴時から"長い付き合い"を予感させるものに出会う事がありますが、まさしくこのアルバムはそうなるだろうという確信がありましたし今も変わらずそう思っています。

 

https://open.spotify.com/track/1LqZXtuDnYISMrfgqDAqDI?si=PZNEp0zJQ0WuICdloS-Kbg

 

 

35.  Robert Stillman - Reality

 

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気持ち良いところで微妙にズレていくテーマに不安を覚えます。基本的には穏やかですが、重なっては離れていくを繰り返す展開の内側になんとも言えない居心地の悪さを感じます。UKの若きマルチインストゥルメンタリストが作ったスピリチュアルなジャズ作品は簡素なメロディと不穏な揺らぎを同時に待ち合わせた不思議なアルバムでした。曲が進む毎に音の強弱とは違う意味での"激しい"実験精神が増していきます。このような作品は普段聴きするようなものではないのですが、何故か永遠に核心をつかない感じがクセになりついついCD棚へ収納された本作へと手が伸びるのです。

 

https://open.spotify.com/track/4UlOFB7MkNR79ATXc95sCB?si=JQoHZKc5R8-t5UTv14NBog

 

 

34.  Tahiti 80 - FEAR OF AN ACOUSTIC PLANET

 

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歳を重ねるうちに変化した事がいくつかあります。肉より野菜が好きになったこと、茄子が食べれるようになったこと、ゲームをする集中力が一日2時間くらいしか持続しなくなったこと。発売日に買ったくせに当時は全く良さがわからなかった『Wallpaper for the Soul』がタヒチ80で一番好きなアルバムに変わったこともそのうちのひとつです。最近行ったギターポップのDJイベントに来ていた人たちは皆口を揃えて「タヒチ80が好き」だと話してくれました。今作は過去曲にセルフアコースティックアレンジを施し、従来より更に暖かく風通しのよい質感のものに変化させました。長い年月多くの人々に愛されるのも納得の人懐こい良曲集です。

 

https://open.spotify.com/track/0fVXBS5d89vfingn9Bc9Ja?si=V2MzkWB5S7-MOfK_Q0951A

 

 

33.  (Sandy) Alex G - House of Sugar

 

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止めどなく湧き上がる歌の衝動を、丹念に真心込めて命を吹き込むからこそ人の心に作用します。装飾を施そうが生身を晒そうが根っこは至ってシンプルに"良い歌"で、それはいつだってさり気なく記憶の片隅に残り気付けば長い愛聴盤になります。誰にも似ていない独自の美しい感性を語り続けるソングライターは古今東西たくさんいましたし、特にUSインディシーンはその手のジャンルの層が厚く誰しも忘れ難い人物をひとりふたりと思い浮べる事が出来るハズです。長い月日が経ったあとのわたしにとってアレックス・Gがそんな存在になるかは現時点ではわかりません、ですが少しずつしかし確実にわたしの心の中に彼の切なげな歌は蓄積し始めています。

 

https://open.spotify.com/track/36zqSzaPzQWZYDCNm1klgY?si=5jChKpirQC-jeqbah69r_w

 

 

32.  Exhumed - Horror

 

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有名カルトな1stアルバムリリースから20年以上……重音帝国リラプスのなかでも特別特異な存在であり一大レジェンドとして世界中のマイノリティたちの上に君臨するゴアメタルの帝王エグジュームド、超スピードで血が舞うファストなグラインドスタイルは聴き手の身体を恍惚のまま引き裂き解体する完全ノックアウト仕様の狂音楽集。宝石のように美しい今作のアナログレコード"血飛沫カラーヴァイナル"バージョン、世界中のファン同様我が自宅に鎮座するCD・レコード棚の『他人には見せられないコーナー』にも無事納められ、また新たにわたしの黒歴史がレコード1枚分の厚みを増したのでした。

 

https://open.spotify.com/track/4kZRxNwSA74M3fpj8GEN7q?si=2UPqyIjkT0G1oRKSgdHlMA

 

 

31.  Julien Chang - Jules

 

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いきなりキング・クリムゾンが始まったかと思ってびっくりしました。光の速さでそのムードを葬り去りシティポップへ接近する2曲目で腰が砕けました。まるでビデオを早送りするかのように足早に駆け抜ける20世紀と21世紀の良質音楽遺産。まだまだ発展途上でこの先良い方向にも悪い方向にも変化しそうな危うい匂いも若干漂いますが、こういう影響元ありきでたくさんアウトプットする欲張りな音楽は嫌いじゃないし、なにより全体を支配するビーチボーイズムードがとっても素敵じゃないかと感じるインディー青年のデビューアルバムです。

 

https://open.spotify.com/track/1wGOiAj0eydWZUyr3oCTu9?si=eE1TW5J8TWeoUvTMCkasww

 

 

30.  HAUSCHKA - A Different Forest

 

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曇りの日、夕方のベランダ、梅雨の休日、『リリイ・シュシュのすべて』に出てくるような景色、雨上がりの夜道、森に囲まれた公園、寝そびれた日にNHKで深夜やってる『コズミックフロント⭐︎ヒーリング』をボーッとみるとき、映画『ベニスに死す』……ハウシュカの音楽が似合いそうな風景やシチュエーションを思いつくままに挙げてみました。ポストクラシカル大国であるドイツのピアノ奏者(今年彼が関わったドビュッシーもののアルバムも実に絶品でした)が奏でる音楽は生活のふとした瞬間にそっと寄り添います。

 

https://open.spotify.com/track/7dJ9bvWBvwBYevja1mI62v?si=qoCB284tTsaogLUqMpC_Aw

 

 

29.  Gnew Their Tongues - An Eternity of Suffering, An Eternity of Pain

 

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「轟音を重ね続けるとドリーミーになる」を証明したのがマイ・ブラッディ・バレンタインなら、「凶悪を重ね過ぎると逆にふわっとしちゃう」という超事実を発見したのがオランダのキングオブエクストリームGTT。この人の音源で個人的に一番好きなものは『Reeking Pained and Shuddering』ですが、今作もなかなかに狂ったナイトメアで満足度が高いです。漆黒で異常ではありますが怖がらせようとして実はそんなに怖くない感じが可愛いくて仕方ありません。終始"ダークウェブの奥地で発見されました"的動画で流れてそうなアルティメットストロングスタイルドローンノイズ、これがメタルの極北です。

 

https://open.spotify.com/track/6wBFZyUHG6VlL2FVg1jLev?si=tcXvXVjdSIWHCUVf5dKqFQ

 

 

28. Van Morrison - Three Chords and the Truth

 

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近年の異常なハイペースぶり、ロビー・ロバートソンとの感動的なデュエット、そして今作での充実したソングライティングでモリスン爺さんは創造の大充実期に突入中だという事が証明されました。まさかまさかな『Astral Weeks』以来の邂逅というファン感涙のサービスをキメつつ呑気なステップでダンスを踊ります。ゼムから数えて54年という悠久の流れの軌跡をゴキゲンなリズム&ブルースに乗せて肩肘張らずサラリと表現する姿に"男が惚れる理想の男像"を見ました。いつか必ず彼のライブを観ること、それがわたしの変わらぬ夢です。

 

https://open.spotify.com/track/6HsFjDgkLGJVORUvinuSEx?si=2e5YfJfQRMesgMxB47awOQ

 

 

27.  Tedeschi Trucks Band - Signs

 

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いまから10年以上前、わたしのじいさんが天寿を全うした際にお経をあげてくれた坊主が大のブルースロック好きで色々話をする機会がありまして、会話の中で「俺が思う現在最高のルーツロックアーティスト」と坊主が高らかに告げたのがデレク・トラックスとその一味でした。彼そして彼の奥様や仲間たちが奏でる音楽はそれ以前/それ以降そして現在に至るまで音楽シーンの浮き沈みなどとは無縁、淡々としかし確実に心に染みいる音楽を作り続けています。聴き手によっては長年進歩のない過去の遺物的な音楽と感じるかもしれません、ですが今も変わらず世界中多くの人々に愛されているのにはきっと理由があるのです。

 

https://open.spotify.com/track/56mB15h848RVKCtnV6wl9m?si=3LaH-_GGTIe1joH2vAjLgA

 

 

26.  Aviva Le Fey - Lovesick

 

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古い振り子の時計のようにのんびり時を刻むパーカッション、手持ち無沙汰でなんとなく爪弾いたみたいなアコースティックギターの音色、いまは誰もいない田舎の一軒家に置いてある古いレコードから鳴る音楽のように誰もが忘れてしまっていた簡素なメロディ、それらを愛の哀しみと共に歌うシンガーソングライターのデビュー作はチリや埃の匂いと共に古い音楽の世界へ誘います。休日、ふいに入ったお店でこんな音楽が流れていたらそれはとっても素敵だな、なんて思ったり。

 

https://open.spotify.com/track/7BdAGgTsI2lF45tra0j1uF?si=WkH5UZE3SVyj6DVOhDdvvQ

 

 

25.  maco marets - Circles

 

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日射しが強い2019年5月25日昼過ぎのひととき、東北地方の小さな町にある切り立った岩壁の前でパフォーマンスを行うmaco maretsを見ました。確かに彼はそこにいたのに実は誰もいなかったような、蜃気楼のような、逃げ水のような不思議な音楽だとわたしは感じました。新しくリリースされたこのアルバム、わたしは空が白む明け方によく聴きます。夜遊び後に感じるような倦怠感の混じったチルい空気や寂しさと興奮が入り混じった気持ち、酔いが醒めかけた感覚とかタバコの残り香とか……ラップというよりはポエトリーのようにつぶやき続けるmaco maretsの音楽を聴くとそんな朝の気怠い気分を思い出します。

 

https://open.spotify.com/track/7aBaz6XYpfczLw5s5vuGeL?si=sR5mBQ2-RwmytN8KLWvqRQ

 

 

24.  Cuco - Para Mi

 

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"ユルくチルく"というインディ的美学が広く一般化してからというもの""ゆるいインディーロック(ゆるインディ)""の数は爆発的に増え玉石混交、まさしく戦国時代に突入しています。基本的にこういう音楽は大好物ですが、だからといって十把一絡ユルけりゃなんでも良いって訳じゃ当然なく自分のライフスタイルに見合ったものを的確に選びたいものです。新世代チルウェイブの代表格クコ君が作った癒し系ポップス、お仕事後に入る丁度良い温度の湯船のようにわたしの心と体を柔らかくほぐします効き目抜群の効能です。

 

https://open.spotify.com/track/1S8p8ckDT2D6imAfsppGRl?si=lmrEh4OGSTm6KukB3cTAWg

 

 

23.  American Football - American Football (LP3)

 

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身体が小刻みにずっと震えていたし、もはや雨具は意味を成していませんでした。あんなとんでもない豪雨に打たれ続けたのは人生で初めてで、本当に生命の危機を感じました(風邪をひかなかったのが奇跡です)。待ち時間中何度も挫けそうになったけど、待っていて良かったと心から思えます……2019年7月27日の話です。あの日以降アメリカン・フットボールの3枚目を聴くとあの時の光景…豪雨の中光輝くステージをじっと見つめる人たちの顔とか雨音混じりの美しいメロディとか、そんなあれこれが思い浮かぶようになりました。今は暖房が効いた部屋で廻るレコードをボーッと見つめながら聴いています。あんな天候は2度とごめんですが、彼らの音楽は何度でも味わいたいです。

 

https://open.spotify.com/track/416RdxnniRDcpxQNTEtljQ?si=SHBBzHhlQVmDQt0tLdrJuQ

 

 

22.  Amar Lal - Gardening

 

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日曜の夜に部屋でこの音楽を聴きながらアントニオ・タブッキの『レクイエム』を読みました。平日の午後にいつも行く喫茶店カルペンティエルの『失われた足跡』を読みながらこの音楽をイヤホン越しに聴きました。夜通し起きた朝方にプレイステーションの『風のノータム』をプレイしながらこの音楽を流していました。必要以上に干渉してこない音楽、なにかの邪魔にならない音楽、そしていつの間にか鳴ってる事さえ忘れていく音楽。Amar Lalは優しく静かな音楽の庭を創造しました。

 

https://open.spotify.com/track/4dG6a934hFTbTWaCtqpASz?si=9eKMbMLRQEaMeTjskM2_Uw

 

 

21.  nami sato - Our Map Here

 

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生活と幻想の交叉点。被災地に今も元気に暮らす人々の声は優しいエフェクトを施され音楽に溶け込み融合し、スッとわたしたちの心に染み込みます。現行アンビエントへ2000年代前半頃のエレクトロニカ的エキスを一雫垂らした、ノスタルジーの波紋が永遠に広がる仙台発の望郷音楽集。慌ただしい毎日だからこそ、このような音楽に耳を傾けることができる時間はとても幸福なのです。

 

https://open.spotify.com/track/2z38Mnlk8snWpzqHyXyPKI?si=DS0JNrc6Qpyy52Ch9JymXw

 

 

20.  缺省 - Life in A Vacuum

 

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轟音の彼方に見えるのは意識すら爛れ落ちてしまった誰も知らない耽美な背徳の体験、激しく自己陶酔しながら漂うゆったりとした美しいメロディは妖しく輝きうっとりするギター音が身体を這い回ります。平日の昼間ソファに寝っ転がって聴くシューゲイザーは現実逃避の調べ、生命力が奪われ時が溶けていきます。数年前からアジア全域に急速に広がったシューゲイザーの波の結晶が凝縮されたこのアルバム、現行世界最前線地域の充実度を北京のバンドの新作からも存分に味わえます。

 

https://open.spotify.com/track/5H6kHlO5igi3bRaBTK9lx5?si=z37cCv0PR1-Z6JBARLn9Tw

 

 

19.  Caterina Barbieri - Ecstatic Computatin

 

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当ブログ年間ベスト記事の常連、世界中の音楽メディアから大絶賛された若きトリップマイスターのMegoネクストステップ。わたしたちが普段生活している俗世間から【安易に踏み込んではいけない領域】へ橋渡しを行うミラクルシンセミュージックは依然健在、むしろ取っ付きやすさとシリアス度合いを更に高め、"沼にハマって(新作を)きいてみたらこれまで以上の沼"といった感じで魅力をメガ進化させています。昨年(2018年)ここ日本で行われた彼女のパフォーマンスはオーディエンスの脳に直接電気信号を送り続けるかのようなブッとんだもので未だわたしの身体は平衡感覚が狂ったままですが、きっと今頃は更なる異次元へと突き進んでいることでしょう。早めの再来日を切に祈ります。

 

https://open.spotify.com/track/0fjYD3Tx5XHuI4yfCjhUfU?si=U0HXDjDsTEifYlwX-eGnGA

 

 

18.  Blankenberge - More

 

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轟音ギター交響楽団の第2楽章開幕です。ここは発声の意味が消えホワイトアウトする世界です。晴れの日の地吹雪のように清らかな白が視界一面を覆い、唯一の道標となるのはバーストしたギター音のみの空間です。ある一点のみを貫き極めた音楽は素敵です。サンクト・ペテルブルグの美しい光が生み出したギターオーケストレーションシューゲイザー/ドリームポップ愛好家の涙腺に触れ、当然の如くわたしも幾度となく39分26秒という時間を繰り返したのでした。

 

https://open.spotify.com/track/5cTWjmahOp7R6KGy7cAhmM?si=FNyoEmCHRemq4gjFGNM7uQ

 

 

17.  Fennesz - Agora

 

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あの頃、みんなフェネスを聴いていました。通っていたレコード屋やクラブに集う人たち、音楽好きの友達、知り合い、顔見知り。繊細でロマンチストで今にも壊れそうで未完成な終わらない夏にみんな夢中になりました。あの頃夢中になった電子音楽家の新作、もう離ればなれになってしまったあの場にいたみんなも聴いているでしょうか。隙間のない淡い音色、思えばいつだってフェネスは水の印象(『Venice』や『Black Sea』)。窓から見る6月の雨、秋の朝霧、そんなイメージを思い浮かべました。

 

https://open.spotify.com/track/1yG7EIWbe9UyLmW5fGCtdt?si=AyixVN4iTCKNgkko9qmZ7Q

 

 

16.  Haunter - Sacramental Death Qualia

 

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「速い/叙情的/ブルータル」という"メタル3種の神器"を揃えた屈強な重轟音は、泣きながらブチギレて迫ってくるかの如くこちらがどう対処していいかわからない迫力を携えて波動砲を撃ち続けます。永く壮大な神話を訥々と語り、いざ決戦だと言わんばかりにズゴズゴズゴスゴズゴズゴズゴズゴと無遠慮に切り掛かってくる重音パートは重音暴力音楽を愛するものなら血湧き肉躍り興奮もひとしお、全てを蹴散らしアルバムラストのカタルシスへと突き進んでいきます。新世代プログレブラックメタル一等星の新作、『うしおととら』に出てくる白面の者みたいなアルバムジャケットも個人的に凄く好みです。

 

https://open.spotify.com/track/2dT03DlQdT67b35eN6OJFj?si=aqpPCzf6ThOQxVmKr3FsAg

 

 

15.  Mercury Rev - Bobbie Gentry's the Delta Sweete Revisited

 

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バンドのトレードマークであるジョナサン・ドナヒューの声を封印、オリジナルではない企画ものっぽい作品のくせして彼らが近年リリースした作品の中では抜群に"マーキュリー・レヴの世界"な感触がする新作。流れる音楽から漂う微量な湿度が異国の情景を脳内に思い浮かばせ、「ここではないどこか」にいるような白昼夢的目眩を覚えます。大乱闘スマッシュブラザーズ級に絢爛豪華なゲストボーカリスト陣もそっと音楽に寄り添うような優しい歌声を響かせており、長いバンドの歴史上にまた新たな煌めきを記しました。

 

https://open.spotify.com/track/0DfEKV8mugiiW6djD0HJeP?si=fzcmLjCBTp2RdEWujNBgIg

 

 

14.  Young Guv - Guv Ⅰ

 

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基本的にこの子の事が可愛くて可愛くて仕方ないので、ファックト・アップやらヨット・クラブやらマーベラス・ダーリングスやらその他多彩な活動のほぼ全てをEPまで含めて愛聴しているわたしですが、今回はギターポップ/パワーポップ愛好者に対してかいしんのいちげきクラスの仕上がりとなっており今まで以上に愛が深まります。この子はその時の興味関心でガラッとカラーを変えるのが常ですが、今作の誰が聴いてもわかる"影響元に対する溢れんばかりの愛情表現"的スタイルは本人の無邪気に楽しそうな姿が瞼に浮かぶようで聴き手も満点の笑顔不可避です。あっさり参照元を変えた『Guv Ⅱ』との2in1盤もありますが個人的には断然『Guv Ⅰ』単体なのでこちらのみ選出しました。のびのび楽しそうに音楽やってる人って素敵…ほんとに素敵です。

 

https://open.spotify.com/track/2F3Dr2vQwwjMOlLjC37dpv?si=4yhKEAIRTYevtw7oUIkfOg

 

 

13.  Paal Nilssen-Love - New Brazilian Funk

 

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草一本生えないくらい空間の全てを爆発し尽くしやりたい放題やってアルバムは終わります。選ばれし音楽家たちは臨界点に向かって汗の飛沫を撒き散らしながら猛進していきます。彼らの音楽が通り過ぎたあとの空間は草一本生えない焦土です。切れ味の鋭いポストパンクにノイズとハードコアとファンクという攻撃性だけを異常に特化させた構成で挑む一本勝負。"うるさい音楽"を愛する全ての人類へ捧ぐ超絶激音フリージャズ、だれしも自身の身に潜めている危険な破壊衝動はこのような音楽を聴いて発散させるとよろしいです。

 

https://open.spotify.com/track/7xskH4LAwEqh6LMACHTgB8?si=Lka0fSjbT3CjUzJ3COShFw

 

 

12.  Ana Roxanne - ~~~

 

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霧の一本道や脇道の小川、対岸の工場、梅雨時期の田んぼとか……アナ・ロクサーヌの音楽を再生するとおそらく時空軸が歪むのでしょう、家に居たはずなのに気付けば以前どこかで見たことがあるような景色が眼前いっぱいに広がっています。彼女が控えめに吐き出す霊波は少量でも大変危険で、空気中の目に見えない物質が震え時間や常識がぐにゃりと裏返ります。音楽を停止すればきっと元の世界に戻れます、ですがこの世界から抜け出すのは容易じゃありません。

 

https://open.spotify.com/track/75mMC2cnD58FHOrMGmxf6i?si=K6ChFROXQ7e3e8rTJKo2GQ

 

 

11.  Kandodo 3 - K3

 

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Ladies and Gentlemen We are Floating in Depth Space!!とスピリチュアライズドの名作をもじって言及してしまいたくなります。スペースメン3〜EAR・ソニックブームソロの系譜に連なるようなディープサイケ。魂だけが重力から解放、そのまま肉体を抜けて宇宙の果てまで浮遊もしくは深海の底まで沈降していってしまう精神剥離剤は、聴いている間だけ作用し一時的にわたしを取り巻く全てのしがらみから解放してくれます。さあ部屋を閉め切って明かりを消して周りを警戒して、甘い香りのドローン吸ってどこまでもダウナーな夜を。

 

https://open.spotify.com/track/6yx2EQvXsE1INqWctqpkAn?si=l6_35YZaT6G1oEVUOKpXQw

 

 

10.  Moons - Dreaming Fully Awake

 

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ユリイカ令和元年12月号とかアンド プレミアム特別編集号とかも良かったのですが、今年一番涙腺に触れた音楽記事はラティーナ2019年11月号『So Quiet 〜静寂のための音楽〜』特集です。登場する音楽全てが素晴らしく新たな出逢いがたくさん詰まった非常に良い記事で、シンプルながらも蝋燭の光のように暖かく輝く音楽を奏でるブラジルのバンドに出逢ったのもこの特集記事がきっかけでした。昨年配信リリースされ今年フィジカル可された作品が話題のようですが、今年配信リリースされた最新作はタイトルもジャケットも全てがそのバンド名に似合った"人々の夜を優しく照らす音楽"で、わたしは今宵もステレオに耳をそば立てて眠りにつくのです。

 

https://open.spotify.com/track/6WHO6YMC8jICxSLT68nNlF?si=aJZhacUGSrW7npVj29Jaqg

 

 

9.  Nkisi - 7 Direction

 

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アンダーグラウンドからリー・ギャンブルのレーベルを通して世界中を震撼させたキシ。アヴァンギャルドやエクスペリメンタルを含むインテリジェンステクノとハードコアな原始レイヴの邂逅は前世紀エレクトロニックミュージックをハイブリッドにリニューアルし、大方の予想通り今年様々なメディアに大絶賛されました。繊細で攻撃的なサウンドテクスチャーは脳と身体を覚醒させ、終わらないダンスの渦へとわたしを誘います。薄暗く欲望が蠢く地下のクラブかそれとも深夜の野外レイヴか……自宅のリビングに居ながらにしてそのどちらの光景にも瞬時に連れて行ってくれる2019年最良のダンスミュージックです。

 

https://open.spotify.com/track/3RZfuDLsycxPFrCGwnRlSv?si=FM2oGna6QVqIo3sPJGvnNg

 

 

8.  HoSoVoSo - 春を待つ2人

 

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珍しく早い時間帯に起きた土曜日は午前中のうちから洗濯物を干したり部屋を掃除したり近所のスーパーに食材を買いに出たりします。休日の午前はボーナスステージ、最も心の余裕がある時間帯です。そんな早起きした休みの日にはローラ・ニーロの「Wedding Bells Blues」とかサブリミナル・カームの「カントリー・リビング」とか、いつの間にか生活に寄り添って馴染んでいくような優しい雰囲気を持った音楽を聴きたくなります。時間がのんびり過ぎていく感じや日向の暖かさを感じる事ができる三重のSSWの歌、『春を待つ2人』はあっという間にわたしの生活に寄り添いました。

 

 

7.  Ifriqiyya Electrique - Laylet El Booree

 

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今年のブッとび案件はチェニジアからやって来ました。キング・クリムゾン『EARTHBOUND』の「21st CENTURY SCHIZOIE」が私たちに見せてくれた振り切れ過ぎて凶悪に音が歪む光景、南アフリカのBLK JKSがクールに完成させたプログレミーツアフリカンオルタナティブ、90年代ボディ/インダストリアルの青い炎、4つ打ちダンスミュージックの快楽、その全てをイスラム神秘主義音楽へミラクル合体させシンクロ率を400%まで高めた奇形のアフリカ音楽。イフリキヤ・エレクトリークの他の何者をも凌駕するハイエナジーな"知性と本能と暴力と陶酔を荒々しくひと縛りにした"スタイルは、そもそも何かの枠に収まろうとする気が1ミリもないやりたい放題加減で本当に痛快としか言いようがない魔術的魅力を発揮しています。

 

https://open.spotify.com/track/13hlqaCe0N175DDmBI4IAz?si=spInpZ97QU-EZxGCCeak3g

 

 

6.  Rex Orange County - Pony

 

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とぼけた顔してどこまでも涙腺を刺激する音楽を作る好青年。ブルーアイドソウルを基調とした過去の音楽遺産をスポンジの如く吸収するだけでなく、それを新芽のように瑞々しく再構築し直したソウルフルな楽曲群は水をも弾く若々しさで我先にとスピーカーから飛び出していきます。どこか知らない街を歩いていて彼のレコードが壁面にかけられているレコード屋を見つけたら、きっとそのお店はセンスが良くていい音楽をたくさん棚に詰め込んでいるんだろうなぁ…とかそんな現実に起こってもいない素敵な出来事を夢想しながら聴いていました。

 

https://open.spotify.com/track/4tVphly4D1PB8tJC9gHMcJ?si=5og-wPVnRimGmxzdSvN8jQ

 

 

5.  Bruce Springsteen - Western Stars

 

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シリーズ“アメリカをうたう”第19回目、生涯現役ボスのライフワーク新作。暴走列車のように突っ走りながらアメリカの心を照らし出し暗部を浮き彫りにするいつものボスも好きですが、今作のゆったりとした南部的サウンドをベースに悠然と歌うスタイルはまさに極上の出来、「過ぎ去った時」と「今このとき」を同時に映し出します。今年の夏の晴れた午後、陽が傾き始める少し前の時間に部屋のベランダへ出て眼前に広がる立山連峰を眺めながらこのアルバムを聴く時間がたまらなく好きでした。

 

https://open.spotify.com/track/3YJNKUN2oTEARBNooWxhlx?si=T29YMDxmSWKAwEyZotAseg

 

 

4.  PUP - Morbid Stuff

 

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いつだってこんなバンドを贔屓しまう自分がいます。インディーロックとしての誇りをしっかり持っていて、曲が良くてどこまでもポップで何処かへ突き抜けて行きそうな勢いがあって、年甲斐もなく拳を振り上げたくなるくらい俺の中のエモーションを泣かせにくる。昭和が平成になり令和に変わろうが時代遅れでクソほど熱い音楽を好きな気持ちは1ミリも変わらないです。PUP、いつもホントありがとうこれからも貫き続けてください。

 

https://open.spotify.com/track/5fJ7aCs7V78bU3FEnBSYWs?si=HbAnvox6T-2oqs20h1HPGA

 

 

3.  Sunn O))) - Pyroclasts

 

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もはやこの手のジャンルで彼らに敵う存在はいないほど普遍的なものにまで登り詰めてしまったドローンエンペラー新作、今年は『Life Metal』との二本立てでしたがほんのちょっと『Pyroclast』の方が好みでした。とはいえ2枚に大きな変化はなく、毎回マイナーチェンジを繰り返すばかりで前とほぼ変わらない音源をリリースし続ける彼らに何故こんなにも惹かれてしまうのか自分でも理解できていません。彼らに惹かれる理由をひとり考えていました…過去も現在も未来もなくただ音が永遠鳴り続けているだけなのは何故?、考えすぎて「もしかしたら今までの全アルバムが繋がってひとつの"長大な実験的1曲"になるのではないか」、などと狂気じみた事まで考え出してしまう始末です。そもそもこんな偏り過ぎた音楽が世界的に大絶賛されカリスマと崇められているのもよく考えたらおかしな話です。なんか色々考えてたら怖くなってきたのでそろそろやめますが、快楽黄金比の重美音はきっと10年後も20年後も同じような音で意味をはぐらかしながら持続し続けるのでしょう。

 

https://open.spotify.com/track/24jWKZE0j30z3LlnzArFf2?si=CQ01TwLgRbKf8i8Nzvrk7A

 

 

2.  Kaede - 深夜。あなたは今日を振り返り、また新しい朝だね。

 

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2019年の夏が始まる少し前。個人的な話ですが長年勤めた会社を辞め、そして子供の頃から長年暮らした街を離れる決意を固め人生の岐路に立っていたちょうどその頃。深夜ラジオからふと流れた「飛花落葉」という美しい曲を聴いて気持ちがゆらゆら揺れ動いていたその時のわたしは一瞬で恋に落ちました。わたしには遠く離れた街に住む恋人がおり、この曲を聴くとたまらず声が聞きたくなります。このアルバムのアナログレコードの発売日は偶然わたしの誕生日でした。新しい街に引越し、新たな生活新たな職場で日々あたふた過ごしている今現在でもこの曲を聴くと感情が溢れそうになるし冷静に魅力を伝えることができません。ですが今年この曲を聴いてたくさんの夜を過ごした事は事実だし、今夜だってきっとそうです。

 

https://open.spotify.com/track/5tz5MoFz9yTkpIKeoF4Viw?si=QaPT-O1pQs6k2sau2X4F9Q

 

 

1.  Whitney - Forever Turned Around

 

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初めて通しで聴き終えた瞬間から「今年一番繰り返して聴くアルバム」になる確信がありました。飽きもせず何度も何度もターンテーブルの上に『Forever Turned Around』のレコードをセットしました。わたしの誕生日に山奥でキャンプをしていて、深夜焚き火を見つめながらふたりで静かに「Day & Night」を聴いていました。当ブログの別記事でも書きましたが「わたしにとっての2010年代はリアル・エステートのアルバムで決まり!」、話はこれで終わるハズでした。一般的に言われる"名盤"は確かに存在します。ですがそれと同時に他の誰の評価でもない"わたしだけの大切な音楽"は人の数だけあるのが当然です。2010年代最後の1年、とっておきの大切な音楽が1枚増えました。

 

https://open.spotify.com/track/2eKDsofd0MQv9LzLlv7Ocl?si=uQIsWkAfStexUxzpKC9sTw

 

 

 

今年もたくさんCD/レコードを買ってしまいました。

 

ランキング圏外にはなりましたが、今年愛聴した盤は他にも多数あります。ボブ・モウルドやジェニー・ルイスやビル・キャラハン、カレン・O、モーターサイコ、マイカル・クローニン、ウィルコなどのお馴染みオルタナ組。宇宙ネコ子の『君のように生きれたら』の青臭さもグッときました。花澤香菜も一時期永遠と聴いていましたが大傑作だった前作・前々作に思い入れが強すぎてその壁を越える事が出来ませんでした。

 

年間ベストにランクインするような作品は基本的に相当回数聴いて身体に馴染んだものばかりなので、12月にリリースされたものはほぼ入りません。

 

今年は私生活で環境がガラリと変わり、音楽など聴く余裕がない期間が長くありました。しかしいくら離れても結局ここに戻ってしまう、ここ(音楽)が一番居心地が良い場所なのかもしれません。

 

来年から始まる新しい10年間、時代もライフスタイルも音楽の在り方・聴き方も変わるだろうけれど、好きなものを好きでいる気持ちだけは変わらず持ち続けたいものです。以上2019年の年間ベストでした。