2016年下半期ベストアルバム

 前回の『2016年上半期ベストアルバム』発表以降も、自分の気の向くまま思いの向くままフラフラとマイペースに音楽を聴いていました。それを何かしらのカタチに残したく、上半期ベスト発表後の"6/13〜現在までの期間に発表されたアルバム"の中から、これは好きだ…と感じて何度も聴いた作品を『2016年下半期ベストアルバム』と銘打って50枚ランキング形式で選出しました。

このベストは"人に薦めたい思い"というよりは"音楽を聴きながら毎日を過ごした自分の記憶/記録"みたいな感覚で書き綴っていて、極個人的な日記のようなものです。2016年の初夏から冬にかけて、僕はこんな音楽たちに心を奪われました。ごゆるりとどうぞ。

 

 

 

 

50  Title Tracks  -  Long Dream

 

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聴けば誰しも気にいる(であろうと信じている)小細工なしのストレートで良曲揃いの素敵なパワーポップ。音楽愛をこれでもかとたっぷり注いでいるのに脂っこくなくスッキリしているので疲れた気持ちをリセットしたい時なんかに最適かも。「元Q and not Uの〜」とかいう枕詞なんてそろそろ必要ないと思う。(Q and not Uは最高のバンドだったけれど)

 

 

49  Shield Patterns  -  Mirror Breathing

 

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深い霧に包まれたように音像が薄っすらボヤけたダビーでアンビエントでクラシカルなサウンドがドープなマンチェスターのエクスペリメンタルデュオ新作。静謐で消え入りそうなClaire Brentnall嬢のボーカルも神秘的な雰囲気を演出していて素晴らしい。CD/レコード棚に並べるならポーティスヘッドやマッシヴアタックの隣。

 

 

48  Pixies  -  Head Carrier

 

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かなり賛否両論分かれた(どちらかというと否が多いような気がする)ピクシーズの新作、自分は割と好き。要するにフランク・ブラックは新メンバーのパズ・レンチャンティンにたくさん歌って欲しいからこのアルバム作ったんでしょ?ってなくらいパズの魅力満載。全盛期の狂気や野獣の雄叫びは身を潜めた感じあるけどそれでもやっぱり隠しきれないピクシーズらしさに魅力を感じる。

 

 

47  Róisín Murphy  -  Take Her Up to Monto

 

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キラキラとドリーミーでありつつも全体的にクールな雰囲気がイカしてるRóisín嬢の新作。Molokoから数えると相当なキャリアなのにいまだにキュートで新鮮味溢れる作品を届けてくれるのはリスナーとしては嬉しいかぎり。お家でゆっくり聴くのにちょうど良いエレクトロミュージック。「Lip Service」のスウィート&エレガンスなラウンジ風味ポップスすごい好き。

 

 

46  Fernando Allendes  -  Contra la Muerte (feat. Cuarteto Surkos,Gonzalo Allendes,Gonzalo Gómez & Juan Pablo Jaramillo)

 

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優雅さと不穏な美しさが実によい塩梅に混ざり合ったクラシカル&ポップなジャズアルバム。「隣近所の奥様を誘って午後のティータイムに出しても恥ずかしくない」くらい室内楽正統派なくせして「これ聴きながらお茶したら絶対険悪な雰囲気になるでしょ」ってくらいアバンギャルド本格派。

 

 

45  Lorenzo Senni  -  Persona

 

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昔懐かし実用的レイヴサウンドと室内聴きに最適なIDM風味を悪趣味寸前のところで絶妙にミックスさせアート方向にシフトさせるイタリアのミニマルトランス代表選手まさかのWarp移籍作。先鋭的なアーティストであれば何でもオッケーって感じな「ガンガンいこうぜ」スタイルでリリースを続ける老舗Warpのスタンス良いと思うから来年以降もブッちぎり続けて欲しい。

 

 

44  Suzuki Junzo  -  If I Die Before I Wake

 

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自由でアウトサイダーアートな雰囲気のフリージャズノイズインプロアルバムは時にクラウトに時にアンビエントに寄りつつちゃんと「聞き手を意識した音楽」していて良い。サーストン・ムーアが様々なレーベルからリリースしている一連の"ノイズともジャズともいえない実験的な作品群"に近い雰囲気が自分好み。

 

 

43  The Dillinger Escape Plan  -  Dissociation

 

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帝王デリンジャーエスケイププランの6枚目にしてラストアルバム。激烈さは初期から比べるとだいぶ落ち着いたように感じる(慣れただけ?)けど、今作のあまりにも混沌とした音は人間の理解できる範疇を超え笑っちゃうしもはや誰にも止める事が出来ない狂いっぷり。これで解散とか嘘でしょ?

 

 

42  The Dear Hunter  -  Act Ⅴ : Hymns with the Devil in Confessional

 

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エモいメロディーと壮大な世界観。まるで演劇を鑑賞しているかのような芝居掛かった展開に心踊る世にも珍しき歌謡プログレエモオペラ。全編聞き流す余裕がないほど展開が目まぐるしく変わるごちゃまぜチャンポンなエンタメアートロック満漢全席74分凝縮コース。

 

 

41  Madeleine Peyroux  -  Secular Hymns

 

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今に始まった事ではないがマデリン・ペルーはとにかく選曲のセンス+原曲をリスペクトして彼女流いぶし銀ポップスに昇華させるセンスが抜群に良い。全ての音が心地よく響き優しく包み込む、酸いも甘いも噛み分けた大人の為の"ビターな人生のパートナー"みたいなアルバム。

 

 

40  Eguana  -  The Last Dragon

 

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さあ人生ドロップアウト!うっかりハマってしまったが最後、"こちら"の世界に戻ってこれない恐れアリのアンビエント/ドローン/トランス/ニューエイジ。サイケ&ダークファンタジーなスモーキーチルサウンドは用法用量を守って正しくお使いください…。

 

 

39  Sticky Fingers  -  Westway (The Glitter & The Slums)

 

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めちゃくちゃポップでほんのりブルージーでソフトにサイケ、砂ぼこり舞う土臭い匂いがプンプンするオーストラリア産レゲエ+フュージョン+インディロックバンド新作。本国ではBon Iver新作を抑えてチャート1位取ったって話マジ!?!?野外でビール飲みながらライブみたら最高に気持ち良さそうだからフジロックのフィールドオブヘヴンとかに呼んでほしい。

 

 

38  Dinosaur Jr.  -  Give a Glimpse of What Yer Not

 

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正直自分は再結成後のダイナソーにあまり興味を持てなかったのだが、今年の夏幕張メッセにて未だ現役感バリバリで最高なダイナソーのライブを生涯初体験して考えが変わった。J・マスシスが着ているMISHKAも見慣れれば可愛い(てかMISHKA着用前のマスシスの姿が思い浮かばないくらい定着してる感ある)。さてさて新作アルバムの方はといえば一聴してわかる安定のダイナソークオリティ。「Knocked Around」の後半部分が好き。

 

 

37  DJ CAMGIRL  -  Problems

 

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人前ではあまり口に出せない(そんな機会もないが…)某X◯ideosの検索タグみたいなDJネームはさておき、カロリー高めなハイエナジー高速アシッドエレクトロサウンドはドラムンもドリルンもブレイクビーツもガバすらも飲み込んだ暴れっぷりのキュートなミュータント音楽。

 

 

36  Oslo 14 Vokalensemble  -  Improvisasjon Komposisjon

 

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個人的には2016年最大の収穫! 声の多重合奏のみによるアヴァンギャルドセッション!声を追求した他のアーティスト(Areaのデメトリオ・ストラトスのソロとかTzadikからリリースしてるマイク・パットンのソロとか…)よりも"音楽"っぽさを感じるのは「To and Fro」の果てしない美しさのおかげかも。

 

 

35  Akasha System  -  Vague Response

 

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ダンスミュージックのノンビート化が進む中、ポートランドのAkasha Systemは安定&安心の4つ打ちで昔ながらのクラブミュージックファンも一安心。満天の星空の下野外で踊りたくなるようなキラキラしていてドリーミーなスペーシーハウス。何気に何回聴いても飽きないスルメ盤

 

 

34  Myrkur  -  Mausoleum

 

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デンマーク孤高の女性ソロブラックメタラーのライブ盤は神秘的なジャケも相まって異教のミサに迷い込んだかのよう。スピーカーの前にいてもその神聖かつ異端な聖歌の響きに陶酔できるんだから現場で聴いてたらさぞブッとんだに違いない。

 

 

33  Juliana Perdigão  -  Ó

 

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聴いててすごく安心できる肝っ玉母さん的な歌声と、豪快かつ優雅なMPBを奏でるブラジル新世代。「オルタナティブであること」と「ブラジル音楽らしくあること」がいい感じに混ざりあい溶け合って産まれた一筋縄ではいかない素敵なストレンジポップソング集。

 

 

32  Bon Iver  -  22, A Million

 

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待望の新作を聴いた一番最初の正直な感想は「ちょっと凄すぎてよくわからない…」だった。自分が評価された場所から勇気ある一歩を踏み出し進化を遂げたジャスティン・ヴァーノンの新しい世界には戸惑いと驚きと感動が詰まっている。あまりに美しくあまりに深淵すぎてまだまだ理解できない事だらけだしうまくコメントできないけど、この先ゆっくり付き合っていきたい。僕にとってはそんなアルバム。

 

 

31  Fvnerals  -  Wounds

 

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仄暗い地下室で繰り広げる秘密の儀式をつい好奇心で覗き見てしまったが故にすっかりその魔術の虜になってしまった。ダークゴシックで催眠術的なサウンドが這いずり回るグラスゴーのドゥーム/ゴスバンド。良い子は耳を塞げ、これは闇の音楽だ。

 

 

30  Mndsgn  -  Body Wash

 

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深夜帯はメロウなビートミュージックを聴きながらインターネットのお時間。優しいメロディー+AORライクでレトロフューチャー感漂うサウンドデザイン+ゆるいヒップホップビート=聴き入っても聴き流しても気持ちいいStones Throwからリリースのマインドデザイン2nd。これ聴きながら『きまぐれオレンジ☆ロード』とか読んでた2016秋。

 

 

29  Lambchop  -  Flotus

 

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ちょっとぐらいの変化なんてものともしないラムチョップ流白昼夢サウンド健在。ヴォコーダーの使用や電子音楽に接近したことにより一層非現実感が高まってフワフワ。もはやオルタナカントリーなんて枠に収まりきらない鉄壁の幻想音楽。CD棚に設けてある"ラムチョップコーナー"にまた1枚宝物が増えた(10枚組BOXが非常に邪魔ではあるが…)。

 

 

28  Fernando Temporão  -  Paraíso

 

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たとえば僕はマリーザ・モンチが心底好きだ。カルトーラが、ノエール・ローザが、ジョビンが好きだ。偉大なるブラジル音楽の先人たちが築き引き継いできた最良の部分をしっかり受け止めつつ自分なりのインディーロックに昇華させるフェルナンド・テンポラォンが好きだ。美しくて軽やかな感じ、多分ずっと好きだ。

 

 

27  BOYO  -  Control

 

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とろけるくらい甘美&耽美で青臭いうえにノスタルジーを感じさせるメロディーがもうホントたまらない極上サイケデリア。輪郭がボヤけるくらいとろっとろになるまで煮込んだBOYO特製ドリーミーロックを熱いうちにどうぞ召し上がれ。

 

 

26  LVL UP  -  Return to Love

 

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懐かしきインディーロック黄金時代の音楽が好きな人たちが、その匂いをたよりにLVL UPの新譜に惹きつけられていくのは当然だしもはや本能なんだと思う。インディR&B/ヒップホップ全盛の時代に、1mmもブレることなくおいしいとこちゃっかり持ってっちゃうSUB POPホント好き。

 

 

25  American Football  -  American Football

 

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秋風に乗って17年ぶりに届けられた奇跡のセカンドアルバム…ああなんて穏やかなんだろう。キンセラとしては毎年様々なバンド/プロジェクトで何かしらのアクションがあるし、再結成だって一時的なものだと考えてたし、そもそも2ndがリリースされるなんて夢にも思わなかったし、発表されたアルバムが予想より何倍も素晴らしいものだったしで嬉しさは倍の倍の倍。Owenの新作と甲乙つけ難いけど自分はこっち。秋の日のドライブ定番アルバム。

 

 

24  Lakuta  -  Brothers & Sisters

 

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一度再生ボタンを押したが最後エンドレスダンス天国行き確実なアフロビート+ソウルなナンバーの数々!著名アーティスト達がベタ褒めするのも納得な逸材。フェラ・クティの蒔いたタネは世代を超えてソウルと結合しLakutaを産んだ。

 

 

23  Bob Weir  -  Blue Mountain

 

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自分的に2016年は"レジェンド達が軒並み素晴らしいアルバムをリリースした年"と記憶されるだろう(ランキング外になったがレナード・コーエンの遺作やジェフ・ベックの新作もかなり素晴らしかった)。オリジナルデッドが奏でる美しきノスタルジー。聴き入るうちにいつしか自分もボブウェアの記憶の景色の中へ…。

 

 

22  Nadja  -  The Stone Is Not Hit by the Sun, Nor Carved with a Knife

 

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 繰り返される重苦しくも美しい轟音が大地を揺さぶる…ポストメタルを深化させ続け、もはやベテランの域に入ったNadjaの新作は最高にドゥームで最高にドローンな重圧音楽の理想郷。34分間ヘヴィな音の渦に飲み込まれ恍惚状態が続く「The Knife」は圧巻。

 

 

21  Klô Pelgag  -  L’étoile thoracique

 

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ジャケの良さにも定評があるカナダ産アヴァンフレンチポップ。複雑怪奇なキュート&ポップサウンドは病的にこだわってそうでケイト・ブッシュを思わせたり。天然なようにみえてものすごく計算高い、少女のようで大人、無垢とずる賢さが背中合わせなモダンクラシカルポップ。

 

 

20  Going Under Ground  -  Out of Blue

 

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アルバムタイトルから一曲一曲の曲名まで全編どこを切り取っても気恥ずかしくなるくらいの「青春時代感」に包まれたゴーイングアンダーグラウンドの新作はとにかくアルバム全部良曲な"成熟した切なさ炸裂"バンドサウンドでものすごく郷愁に誘われる。今までまったく通ってこなかった(むしろ積極的に避けてた)バンドだったのにこんな良作出されたんじゃ敵わねぇな、って感じで無条件降伏の白旗を揚げた。

 

 

19  OGRE YOU ASSHOLE  -  ハンドルを放す前に 

 

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もはや作品毎ではなく1つのライブ毎に未知の階段を一歩また一歩登り進化していっているオウガの新作。悟ったかのように音を断捨離し低音を強調、ドープさは以前と比べ物にならないほど。オウガの主戦場は音源じゃなくて絶対ライブなのでこれが現場でどう化けるんだろうと想像するともうなんか怖いくらい。

 

 

18  落差草原 WWWW  -  霧海

 

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ダークでポストパンク的&アジアっぽいトライバルビート&マントラのようなボーカル&ドローンの如く地を這い、螺旋階段を登り続けるが如く繰り返されるミニマルサウンドで究極にトバされ続ける台湾産ディープサイケ。ヤバいアーティスト達を続々とリリースするGuruguru Brainというレーベル、来年も要注目していきたい。

 

 

17  Daniel Lanois  -  Goodbye to Language

 

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ペダルスティールギターの極上の響きが波間に漂うような浮遊感を味わわせ聴く者を優しさで包むラノワ流絶品アンビエント。数多くの名盤を手がけたプロ中のプロだけが知る悦楽のツボを出し惜しむ事なく解放、安眠効果もバツグン。ちなみにラノワプロデュース作品で一番よく聴いたのはディランの『On Mercy』。

 

 

16  Ulcerate  -  Shrines of Paralysis 

 

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世界中のエクストリーム音楽ファンが待ち望んだ(多分)ニュージーランドデスメタルバンド新作。とにかくドラムの「ドドドドドドドド」っぷりがカッコよい。全てを破壊し地獄の業火で焼き尽くすカオティックサウンドに拍手喝采!!ドドドドドドドド!!!

 

 

15  Noname  -  Telefone

 

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メロウでビター、サウンドの前面に出すぎないラップも素敵。ドリーミーな音とシリアスな歌詞、そして低体温なラップが絶妙なバランスを保っているマジカルヒップホップ。ほんのちょっとノスタルジックでほんのちょっとブルージー、そのほんのちょっとが丁度いい湯加減。 

 

 

14  Supersize Me  -  Slouching Towards Bethlehem

 

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まるで波の如く押し寄せる幻惑的な音の響きはあまりにも温かく心地よく、自我が溶けそうなほど。京都のドローンユニットの新作は恍惚のさらにその先へ誘うナチュラルトリップ水先案内人。音の快楽に溺れちゃお。

 

 

13  Norah Jones  -  Day Breaks

 

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数々の才能溢れる者たちが作り上げたJazzという偉大なジャンルをリスペクトし、かつノラ流ポップに書き換えた今作の音は優雅さと親しみやすさが合わさっていて沁みる。あまりにも偉大な1stから早幾年、ノラ・ジョーンズの新たなマスターピースを祝して今宵もレコードに針を落とす。

 

 

12  Nick Cave & The Bad Seeds  -  Skeleton Tree

 

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ザ・バースデイ・パーティーは大好きだけどそれ以降のニック・ケイヴは1枚も持ってないっていうめちゃくちゃ中途半端な自分でも今作の重苦しく静謐で美しい鎮魂歌に惹き込まれ魂が浄化してしまう。気を衒わずシンプルであるがゆえに美しさが際立つ、フジロック'98楽屋破壊犬顔おぢさんの歌声が心に染みる名盤。

 

 

11  Oval  -  Popp

 

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凄い人だ、という認識はあったけど好きかと聞かれれば答えに困るし、これまでOvalの音楽にハマった事なんて一度もなかったのに…今作のマーカス・ポップはヤバい。正体不明な音の断片がダンスミュージックらしきものに変化して襲いかかってくる。なんて刺激的!CDを聴き終えた瞬間上着を羽織りOval来日公演のチケットを買いにコンビニまで走ったのはホントの話。

 

 

10  寺尾紗穂  -  わたしの好きなわらべうた

 

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自分が意識していなかっただけで素晴らしい歌はこんなにも昔から身近にあったんだ、って事を改めて気付かせてくれる伝承歌カバーアルバム。ただただ元をなぞるだけではなく、原曲をリスペクトし更にイマジネーション豊かに膨らませた各曲のアレンジが感動的なまでに素晴らしい。そして何よりも寺尾紗穂の歌声がこれ以上なくグレート。

 

 

9  Machinedrum  -  Human Energy

 

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カラフルで繊細な音が時に跳ね上がり時に凪になり快楽中枢を刺激するトラヴィス・スチュアートの新作。お家でじっくり聴くも良し、音楽好きのお友達に、もしくは気になるあの娘にプレゼントするも良し、お世話になったあの人へ御中元・お歳暮にも良し。フロアで踊って尚良し。

 

 

8  John K. Samson  -  Winter Wheat

 

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まるで70年代のニール・ヤングのようだ、と思ったらバッチリ'74年作『渚にて』に影響を受けて制作されたらしい、カナダの新たな至宝から4年ぶりのお便り。ロードムービーの如く流れる景色に想いを馳せたくなる、現代人の疲れた心を癒す傑作フォークミュージック。それにしてもAndy ShaufといいANTIからのリリース作品絶好調すぎる。

 

 

7  Case/Lang/Veirs  -  Case/Lang/Veirs

 

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なんの前情報もなしにジャケだけで「おっ新しいプログレバンドかな?変なバンド名だな〜」みたいな軽いノリで聴いてみたらびっくり仰天。この3人で作ってんだからそりゃ良いのは至極当然な至高のインディフォーク。そしてよく考えたらこれもANTIリリース。来年はJapandroidsやティナリウェンも控えているし暫く無敵状態が続きそう。

 

 

6  Sad City  -  Shapes in Formation

 

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桃源郷行きの片道切符はグラスゴーの新鋭から届いた。回数だけなら今年一番聴いた極上サウンドスケープを響かせるディープアンビエントハウス。アルバム一枚通して聴くと身体の中がポカポカ&心がほっこりする効能を携えたエレクトロサイケデリック湯けむり音楽。

 

 

5  Mild High Club  -  Skiptracing

 

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 前作『Timeline』を買ったのが今年明けてすぐくらいで、そのメロウでソフトサイケなノスタルジックサウンドにぞっこんラブして部屋の一番目立つ場所に飾っている。70年代好き/最新インディー好き両方を虜にするレイドバックサマーバケイションポップ。これ聴きながら『ハートカクテル』とか読んでた2016晩夏。

 

 

4  Lee Fields & The Expressions  -  Special Night

 

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『このソウルがラブい!2016』大賞受賞!黒くてぶっといグルーヴが渦巻き、どこまでも甘く囁きかける極上のスウィートソウル&ファンクナンバー。"恋人同士の甘い夜"はもちろん一人孤独な夜も優しく照らす、この道一筋のレジェンドが懐の深さを見せつけた貫禄のアルバム。

 

 

3  Howe Gelb - Future Standards

 

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USインディーファンに愛される漢、その渋いしゃがれ声はまさに国宝級なGiant Sand=ハウ・ゲルブのソロアルバム。録音の響きから何から何までオールドタイムなピアノジャズナンバーは信じられない程暖かく美しく…。伝家の宝刀デザートロックも良いけどこの路線も大歓迎、是非ともレコードで再生したい1枚。きっと数年後も眠れぬ夜に聴いてるはず。

 

 

2  Okkervil River  -  Away

 

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05年に発売された『Black Sheep Boy』を当時中古レコ屋で偶然購入して以降ずっと好きで聴き続けている、テキサスの歌心オッカーヴィル・リバー待望の新作。力強くもしっとりと優しいインディーフォークは、美しくて切ない(そしてちょっと不気味な)ジャケットの印象も相まって夕暮れ時に1人でしんみりと物思いに耽りながら聴きたい。

 

 

1  Jeff Rosenstock  -  WORRY.

 

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最先端だったり、複雑だったり、斜に構えたり、そんな音楽を聴きたい気分の時もあるけど基本的にはいつもポップでロックでカッコいい音楽を聴いていたい。数多くの革新的な作品がリリースされた2016年、自分が下半期で一番気に入ったのはシンプルながらもメロディーが抜群で飽きがこないハッピーなパワーポップアルバムだった。

 

 

 

 以上が2016年下半期ベストアルバムです。

上半期/下半期ベストが出揃ったところで、今年の個人的な年間ベストアルバムを決めました。上半期と下半期で長々コメントまでつけてランキング付けしたので年間ベストは特別な1枚だけ選出することに。

もう何度聴いたことか…『たった1枚の年間ベスト』発表です。

 

 

 

2016年 年間ベストアルバム

 

Mutual Benefit  -  Skip a Sinking Stone

 

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2016年を代表するようなアルバムでもなく皆に好かれるような分かりやすいアルバムでもない。どちらかといえば地味、、、だけどこのアルバムを聴く以前と以後では明確に「普段好んで聴いてる音楽の種類」が変わってしまったくらい自分にとっては特別な存在だったMutual Benefitが今年の年間ベストアルバム。下半期ベストに穏やかな作品が数多くランクインしたのも『Skip a Sinking Stone』の穏やかムードが自分の心の中に広がり溶けていったからだったりして。メディアが評価しようがしまいが関係なし。自分にとってナンバーワンでオンリーワンだった素敵なドリームフォーク。

 

 

 

 

残念ながら選外になってしまったアルバムにも良いものはたくさんありましたし、それと同じくらい"自分に全く合わない"アルバムも沢山聴きましたが概ね楽しいリスナーライフを送れた一年だったと思います。個人的な事だと、今年はまさかまさかのブログ開設でベストを発表するという自分にとっては冒険の年でもありました(初投稿の時はホントに緊張したんよ…)。来年もこの場所でベストを発表出来れば、と思います。

ちなみに『サウンド・オブ・コンフュージョン』というブログ名は自分が心底愛してやまないSpacemen 3というバンドの1stアルバムタイトルから取ってます。そのSpacemen 3の中心人物の一人だったジェイソン・ピアース=スピリチュアライズドは2017年にリリースする作品がラストアルバムになるかもしれないと何かの記事で読みました。新たに産まれようとしている"終わりの音楽"に想いを馳せて、この記事を〆ようと思います。スピリチュアライズドの次のアルバムが最高でありますように!来年のベストに無事ランクインされますように!!ではまた!!!